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麻酔

2015/5/15

今回のテーマは「麻酔」です。小児外科で手術をする際はほぼ全例で全身麻酔を行います。成人の手術では局所麻酔や下半身麻酔(腰椎麻酔)などで行う事もありますが、小児では動いてしまう危険や恐怖感(心的トラウマ)を考慮して全身麻酔を選択 します。

小児外科で手術をする際に、お父さん・お母さんからよく聞かれるのが、「麻酔は安全なんでしょうか?」という質問です。答えを先に言ってしまうと、「麻酔は安全」です。

東京女子医大でプロポフォール(商品名ディプリバン)という麻酔薬を2歳児に使用して、不幸にも亡くなったという話が報道されています。
プロポフォールというのは鎮静薬といわれ、点滴から静脈内に入れることで眠ってしまいます。手術中や手術後など、痛みは無くてもずっと動けない状態が長時間続いたら苦痛ですよね。眠ってしまえば本人が知らない間に治療が済みます。そのための薬です。
プロポフォールは数ある鎮静薬の中で、使用後は速やかに効果を発揮し、中止をすればすぐに効果が切れる、効きやすく切れやすい薬として非常に重宝されています。特に切れやすいというのが重要で、麻酔薬の効果が強すぎた時に薬を止めればすぐに回復します。

プロポフォールは長期間大量に使用した時に、プロポフォール注入症候群(propofol infusion syndrome)という非常に危険な、命を落としうる病態になることがあると指摘されています。これは成人でも起きるのですが、小児の方がより危険が大きいと言われています。
日本での添付文書(厚生労働省が定める薬の使い方)では小児の長期使用は禁忌(使用してはいけない)となっていますが、他の国では定義はさまざまです。つまり小児に使用したら100%問題になるとされている薬ではありません。手術中や術後1~2日の短期使用に関しては小児でも安全だというのが主流意見です。

今回の東京女子医大の事件の問題点は禁忌の薬を使ったことではなく、プロポフォールを通常よりもかなり多い量で長期間使用し、異常が出たときに気づけなかったことが問題なのです。
報道では「プロポフォールを使用した患者○○人が死亡していた!」という表現もありましたが、これは全く意味がありません。
プロポフォールを使うということは、もともと具合の悪い人に対して挿管管理を必要とするような集中治療が必要だったわけです。ある一定の確率で亡くなる人はいます。プロポフォールが悪かったのか、元の病気で亡くなったのか、を調べる必要があります。

我々が使用するほとんどの薬の添付文書には「小児への治療経験は少ないため安全が証明されていません」と書いてあります。添付文書通りの使用に限ってしまうと小児では使える薬がなくなってしまい、また小児に使える新しい薬は今後出てこないという問題もあります。
当院では小児の麻酔は全例で、麻酔を専門とする先生に麻酔をかけていただいています。麻酔の事故は万に一つもないと言われています。車に乗るより安全らしいです。
タクシーに乗るときに交通事故を心配する人はいませんよね?可能性はゼロではありませんが、安心して麻酔を受けていただければ幸いです。

小児外科 松田 諭

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