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成長期のスポーツ障害について

2010/11/15

残念ながら、今回が連載の最終回となりました。私がこの連載をはじめさせていただいた頃は、まだ「スポーツ医学科」はなく、私自身も整形外科の中でスポーツ整形外科を担当しておりました。整形外科医も数名しかおらず、さらに現在のように専門チームに分かれていませんでした。

ところが現在では、スポーツ医学科が単独の診療科となったほか、整形外科の中に人工関節センター、外傷センターが設立され、各医師のスペシャリティが患者さまの治療に最大限活かせるグループとなりました。治療を受けられる患者さまにとっては、最先端の医療を受けられる理想的な環境が整いつつあります。

さて、連載最終回の今回は、私の専門の一つである「成長期のスポーツ障害」についてお話しさせていただきます。

成長期のスポーツ障害について語る前に、まず成長期の骨の特徴について述べなければなりません。成長期の骨では、骨と骨を結びつけるように軟骨が存在します。(成人になるとこの軟骨は骨にかわり、一つの骨のかたまりになります)この部分は「骨端線(こったんせん)」ともいいます。成長期にはこの骨端線の軟骨からどんどん骨が作られ、骨の成長が起こるのです。

しかし、こういった特徴のために、逆に成長期の骨は大変もろくなっています。簡単にいえば、固い骨をやわらかい軟骨が結び付けているわけです。そのため、スポーツで圧迫力が加わったり、牽引力が加わったりすると容易にこの軟骨の部分が傷ついてしまいます。

例えば、すねの骨が膝蓋靱帯(膝のお皿から下に出ている靱帯)で引っ張られて損傷するオスグッド病、ひじの内側の骨が内側側副靱帯(ひじ内側にある靱帯)で引っ張られて損傷する内側型野球肘、などが代表的な疾患です。

これらの疾患は早期に診断して、早期に治療を開始すればするほど予後が良くなります。オスグッド病は骨片が完全に遊離してしまい、時間が経つ(オシクル形成といいます)と痛みが残存しやすく、成長が止まってから手術をすることになる方もいます。内側型野球肘でも進行すると骨が分節化してしまい、痛みの残存、肘の緩さの原因になるばかりでなく、外側型野球肘という重症の障害の原因にもなります。こうなってしまうと、こちらも成長期以降の手術になってしまう例が大変多くなります。

一人でも多く症状が進行する前に予防しようと、当科では「メディカルチェック」も行っています。これはチームや学校に出向き、症状がわずかに出始めている選手を見つけて治療のアドバイスをするというものです。
病院にいて、患者さまが来るのを待っているだけでは救えない選手が多いのです! 早期に障害を見つければ、「治療」といっても何も大げさなものでなく、自分で行うストレッチが中心になります。また、競技フォームに原因があることもあるので、競技動作をチェックして改善できる点を指摘させていただいています。たったこれだけで、障害の進行が予防できてしまうのです!

地味な取り組みですが、われわれスポーツ医学科、スポーツ医科学センターのスタッフはアスリートの障害予防を目的に、日々院内外にてこのような活動をしています。

「関節が痛い、ゆるい、ひっかかる感じがある」こんな症状でお困りの方は、亀田クリニック5階「スポーツ医学科外来」へお越しください。体の障害の早期発見、進行予防に努めましょう。

これで私の連載を終了とさせていただきます。長いこと文才のない私の連載を読んでくださり、ありがとうございました。次は外来で!

スポーツ医学科 大内洋

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