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脳血管内治療の未来

2004/12/15



第一次世界大戦の時、まだ航空機が複葉機の時代だったころ、世界中の多くの優秀な軍の将校達はフワフワと浮かぶ飛行機なんて、偵察くらいには使えるだろうけど、物資・武器弾薬や兵士を輸送するにはあまりに貧弱で、敵を攻撃したり、領土を奪う道具には決してなり得ないと考えていました。ところが、その飛行機が発明されて38年目の1941年12月8日には世界最大の航空機動隊がハワイ真珠湾を攻撃し、広い太平洋の制海権争いは航空機の性能により決まる時代に突入しました。それにもかかわらず、旧態前とした考え方、つまり制海権は巨大な戦艦と大砲で決するという明治時代からの古い考え方にとらわれすぎた日本のエリート将校達はこの太平洋戦争で大敗を喫したのでした。

カテーテルによる治療はまさにこのフワフワと浮かぶ飛行機による作戦に似ています。一見頼りないのだけど、血管に沿って、ダイレクトに病巣へ直行し、多くの情報やいくつかの治療を加えて帰ってくるという一連の作業を、少ない侵襲でこなすことが出来るからです。もちろん、パイロットを一人養成するには莫大な費用と時間がかかります。でも今日ではコンピュータがその手助けをするようになって来ました。脳血管内治療のバーチャルトレーニングなどがその一例です。マイクロマシン、ナノマシンといった微細工学技術を用いた道具やロボットも開発されつつあります。また、カテーテルを人の勘や熟練に頼らず、外部から強力な磁気の誘導により操作する技術もほぼ実用段階に入っております。

内視鏡もカプセル錠のようになり、ますます楽に検査が受けられるようになるのと同様に、新素材の開発は硬い頭蓋骨の中の血管の病気にも応用されていくでしょう。遺伝子治療がもっと進化すれば、脳卒中そのものを遺伝子発現のレベルから予防・治療できるようになる時代も案外すぐそこに来ているかもしれません。そうなれば、カテーテル治療そのものも、もはや古い時代の治療となっていくでしょう。これが本当の科学の進歩だと思います。

文責:脳神経外科 田中 美千裕
<脳血管内治療担当部長>

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