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頚動脈の病気に対する新しい治療

2004/11/15

頚部の内頚動脈狭窄病変に対する治療についてお話いたします。
前回お話した通り、最近日本人にも頚動脈が動脈硬化性変化を起こし、狭くなってくる病気が多くなってきました。実際の症状として、手や足の脱力や一過性黒内障といって、眼の視力は正常だったのに、すべてあるいは部分的な視力消失(一側の眼の前が突然真っ暗になる)が起こり、これが数秒から数分間起こり、通常数分以内に回復するのが一般的です。多くは上半分の視野障害からはじまり、視野全体に及ぶのですが、斑点状や部分的な切痕状の視野障害も時に出現します。これらは主に、頚部の内頚動脈の狭窄病変が原因で、狭窄部の潰瘍や硬化した部位から微小血栓が脳や網膜に飛んで起こるものです。

従来、内膜剥離術といって、外科的に頚部の血管を露出し、狭窄部の潰瘍や倹燒撃と一緒に取り去り、血管内腔がスムースになるようにきれいにお掃除する手術が主流でした。そして、この治療法は内科的治療法(アスピリンなどの内服療法)に比べて、脳卒中の再発を低減できる治療法として、多施設間の大規模な研究によりその有効性が証明されている素晴らしい治療法です。
しかし、この手術は前頚部に10cm長の切開を入れるので、術創(きず)が比較的目立つこと、また、多くの症例では全身麻酔下に行わなければならないこと、咽頭や喉頭の筋肉を支配する神経に障害を残す可能性があるなど、いくつかの欠点がありました。

一方、90年代に入って新素材の発達と相まって、心臓領域ではステントという網目状の特殊な形状記憶合金を筒状にしたものが開発・臨床応用され、急速に普及して、効果を挙げてきました。同様に、頚部の病変にもステントが応用され始め、北米ではすでに内膜剥離術よりステントによる血管形成術の方が主流を占めつつあります。ステントの利点は何といっても、首にキズが出来ないこと、症例によっては全身麻酔が要らないこと、喉頭や声帯の神経を損傷する危険が少ないこと、などから術後回復が早く、入院期間が短くてすみ、早期の社会復帰が可能になる点などです。欠点として、内膜剥離術同様、再狭窄や、脳血栓症の可能性があること、デバイス(ステントやバルーンといった医療材料)が高価で、現段階では残念ながら、保険適応になっていないことなどが挙げられます。多くの患者さまが待っているので、厚生労働省のお役人さんに早く保険適応の承認をしていただきたいものです。

A

A

B

B

C

C

D

D

  1. A .形状記憶合金で作られたステント(開いたところ)
  2. B .狭窄部位にステントを閉じた状態で挿入
  3. C .風船で拡張
  4. D .狭窄部位はステントにより外周へ押し広げられて、内腔は広くなったところ。

文責:脳神経外科 田中 美千裕
<脳血管内治療担当部長>

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