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脳動静脈奇形の血管内治療

2004/09/01

出血性脳卒中の中では割合頻度は少ないものの、比較的若年者(20~40歳代)を襲うことが多い疾患として、脳の血管の奇形があります。
正常の脳神経では血液は他の臓器と同じく、動脈から組織に流入し、毛細血管網を介して静脈に流れます。
ところが、脳の動静脈奇形では動脈血は直接静脈に流入し、(これをシャント=短絡といいます)これにより静脈に高い圧の血流が流れ、周辺の脳組織を圧迫したりすることにより痙攣発作を引き起こしたり、静脈側に瘤ができるなど、脳出血の原因となったりします。
従来、脳動静脈奇形に対する治療法は開頭手術による摘出術がありました。しかし脳の深部に存在する脳動静脈奇形の場合はご想像のとおり完全摘出は難しく、また流出静脈が深部に存在するものでは治療成績が良くないという限界がありました。これに加え、1990年代より奇形そのものにリニアックやガンマナイフといった装置で放射線を集中的に照射し、病巣を縮小させる治療が発達してきました。

しかしこの放射線を照射する方法は出血予防の効果があがるのに1~2年かかること、また奇形のサイズが直径2.5cmを超えると効果が少ないこと、小線量とはいえ、若年者にガンマ線などを照射した場合の長期的な神経組織の変化に対する影響がまだ不明な点、などの問題点があります。上記の治療法の欠点を補う形で、脳血管内治療は発達して来ました。実際には奇形に流入する動脈内にカテーテルを誘導し、動静脈奇形を形成している血管内腔そのものを閉塞させる方法(塞栓術)で、脳血管撮影装置で出血源を同定し、奇形の脆弱な部分をターゲットに閉塞を行い、将来の出血のリスクを低減させる治療法です。

脳動静脈奇形はその形、サイズ、奇形の内部を流れる血流の量、その血流によってもたらされる静脈側の変化、周辺脳組織に与える影響など、極めて多様性に富む病気で、一概にこの病気には開頭術、この病気にはガンマナイフ、これには脳血管内治療とは定義づけられません。また、詳細な血管撮影のデータから治療する必要の無い奇形が存在するのも事実です。
むしろ上記3つの治療法をうまく組み合わせる集学的な治療法を用い、より安全に病巣を縮小・消失させることが大事で、それにより患者さんの体に負担の少ない治療を選んでいくことがこの疾患を克服する重要なカギだと言えます。

  • 治療前

    治療前

  • 治療後

    治療後

脳血管内手術+ガンマナイフ(選択的なガンマ線の照射)により縮小した脳動静脈奇形の術前、術後の血管撮影

文責:脳神経外科 田中 美千裕
<脳血管内治療担当部長>

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