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むし歯を科学する~カリオロジー~

2013/04/15

むし歯の治療というと、これまではむし歯になった部分を削って、詰めることが治療の主体でした。もちろん、むし歯の進行状況により治療方法は異なります。生活習慣病などと同じで、早期発見・早期治療をすれば、その後の歯の経過も良好です。しかし、むし歯があったとしても、痛みがないと歯科受診を先延ばしにしがちです。痛みが出たときには、むし歯が結構進行していることも多くあります。むし歯が進行し、神経(歯髄)まで到達してしまうと、歯の神経(歯髄)を取らなければなりません。そうなってしまうと、治療回数も多くなり、治療後も時間の経過とともに、歯が割れるといった症状が出る等、「歯の寿命」が問題となるような場合が多くなります。

近ごろは、以前のようなむし歯ができたら治療するといった考え方から、むし歯ができる原因を追求して、むし歯の進行に応じた治療内容やむし歯になりにくい方法(むし歯予防)というように、むし歯を総括的に考えるカリオロジーという概念が広まってきています。カリオロジーとは、カリエス(むし歯)+オロジー(学問)の造語で、むし歯学というようなものです。カリオロジーの解明により、むし歯は、一つの細菌が出す酸によって歯が溶ける病気ではなく、口の中にいる多くの種類の原因菌(細菌)による複合感染症であることがわかってきました。このように、カリオロジーは、むし歯の原因を特定し、むし歯の予防からむし歯が原因で起こる歯髄の治療や歯の根の先が化膿したときの治療まで虫歯にかかわる治療すべてを包括した学問です。

むし歯の治療は、歯に巣食った細菌を機械的に取り除く(歯を削るということです)のが原則です。きれいに取り除くのは歯科医師の経験と勘だけでなく、細菌に感染している歯の部分を染めることができる、薬剤を使用して、過剰に歯を削ることなく細菌を完全に取り除いています。

カリオロジーでは、歯の削除量を減らし、歯髄の治療を行う可能性を減らし、虫歯の再発を減らそうとします。すなわち、「ミニマムインターベンション(最小の侵襲で、歯の最大限有効な治療を行う)」が基本的な考え方です。

カリオロジーの研究が進み、むし歯の発生するプロセスが明確になってきました。人間の口の中には無数の細菌(ミュータンス菌、ラクトバチルス菌など)が潜んでいて、これらの細菌は食事の際に摂取される糖分から酸を生み出します。この酸によって歯は溶け出します。このプロセスを「脱灰」と呼びます。しかし、溶け出した歯はそのまま溶けたままでは無く、分泌される唾液の作用により「再石灰化」されます。口の中では、この「脱灰」と「再石灰化」が繰り返されています。以前から、再石灰化を促進する物質もわかってきました。以前より、歯の石灰化を促進する物質としてフッ化物がよく知られています。フッ化物は、自然界のどこにでも存在し、身近な食品などにも含まれています。フッ化物の効果は、歯を酸に溶けにくくしたり、溶けかけた歯をもとに戻す力を促進する力に優れ、また、細菌に対しても抗菌効果や歯を溶かす酸を産生する働きを抑えたりとさまざまな効果があります。むし歯の予防には、はずすことのできない重要な物質であるといえます。

フッ化物のほかに、歯の再石灰化を促進する物質として、リカルデント(CPP-ACP)という物質があります。リカルデント(CPP-ACP)は、「乳製品を多くとる人たちにむし歯が少ない」ことに着目したメルボルン大学 エリック・レイノルズ教授の15年に及ぶ研究の末に開発された画期的な新成分です。ACPは非結晶性リン酸カルシウムのことをいい、CPP(カゼインホスホペプチド)は、牛乳タンパクを酵素で消化したものでACPを歯の表層下まで運搬し安定化させる特徴があります。それらをあわせ持つ新成分、リカルデント(CPP-ACP)は、水溶液内でリン酸カルシウムを有し、歯牙表面に局在してむし歯を抑制-再石灰化することが確認されています。

一般歯科部長 大越林太郎

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